もしも…

「最悪…雨だ…」

 

 

 

5月中旬。

昨日まで天気がいい日が続いてたのに

今日はあいにくの雨だ。

 

 

 

「仕方ない。バスで行くか。」

 

 

 

いつも大学まで30分かけてバイクで登校しているが、

雨の日は雨具を着るのがめんどくさいこともあり、

バスで登校していることにしている。

 

 

 

自宅からの最寄りのバス停は2つあり、

その2つとも同じくらいの距離にあっため

いつも気分で使い分けていた。

 

 

 

「今日は北の方から乗るか。」

 

 

 

そう決めて俺は傘をさして家を出た。

 

 

 

 


雨はどちらというと嫌いだ。

傘という手荷物も増えるし、ジメジメするし

いい事があるとは思えない。

 


6月生まれだからといって

うまいように雨好きとはならなかったみたいだ。

 

 

 

バス停近くのコンビニに寄り

いつものメロンパンとコーヒーを買い

バス停に向かった。

 

 

 

バス停に着く、そこにはバスを待つ人の

長蛇の列。

 

 

 

それを見て並ぶ気が失せてしまった俺は

バス停横にある公園に行き、

そこの屋根付き休憩所で

さっき買ったパンを食べることにした。

 

 

 

「あの列が消えて乗ろう…」

 


そう思いながら、俺はSNSを眺めながら

パンを食べた。

 

 

 

20分くらい経っただろうか…

 

 

 

ふっとバス停見てみると、あの長蛇の列が消えていた。

 


「そろそろ行くか…」

 


そう呟いて重い腰を上げた。

 

 

 

バス停に着き、時刻表を見ると

あと3分で来る予定になっており

「ラッキー」と思いながら俺はバスを待った。

 

 

 

待っている間、彼女からのLINEが来てたので

それを返していた。

 


そうしている内に、気づいたら予定の3分が経っていた。

 

 

 

「あれ?来ないな…」

 

 

 

どうやらこの雨でダイヤが乱れているみたいだ。

 


「まぁ雨の日なんてそんなもんだろ」

そう思いながら、俺はまた携帯を見た。

 

 

 

すると、1人の女性がバス停に来た。

ヘッドホンを首にかけた髪の長い女性。

 


その女性は少し焦った顔で時刻表を見ていた。

 


「16分のバス行ったかな…」

 


人に聞こえるか聞こえないかの声で呟いていた。俺は咄嗟に

 


「まだ来てないですよ!」

 


と言うと、その女性は少し驚いた表情をしたが、「そうですか!良かったぁ〜」と言いながら安堵の面持ちした。

 

 

 

「すみません。教えていただきありがとうございます!」

 


「いえ…」

 


「雨は嫌ですよね〜」

 


(会話続けるんだ…)

 


「そうですね。調子狂いますよね。」

 


「狂います。いつもバスなんて乗らへんのに」

 


「僕もですよ。」

 


「そうなんですか?同じですね!」

 


「そうですね〜…」

 


突然始まった会話。

ここで終わらせるのはバスが来るまで

何か気まずくなりそうな感じがしたから

俺は別の話題を探した。

 


「関西のご出身なんですか?」

 


「はい!やっぱり気づきます?」

 


「はい…笑笑」

 


「あかんなぁ〜、隠しきれへんな〜」

 


「関西弁は強いですもんね」

 


「そうなんですよ〜、直したいんやけどなぁ〜」

 


「えっ!なんでですか?」

 


「なんか可愛くないじゃないですか?」

 


「いや、可愛いですよ!」

 


「ほんまに?笑」

 


「ほんまに!笑」

 


そう言って俺と彼女は笑った。

 


「私こっちに来たばかりで、知り合いとかあんまおらへんからなんか話せて嬉しいです。」

 


「そうなんですか。きっとすぐ友達できます!」

 


「そんなことないですよ‼︎」

 


「いやいや、大丈夫ですって!」

 


「なら、友達になってくれます?笑」

 


「僕で良ければ!」

 


若干ノリでそう返すと、彼女は「じゃあ…」と言いながら携帯を取り出し

 


「LINE教えてください!」

 

 

 

俺は「えっ!マジか…」とは思ったが、

「いいですよ!」

 

と答え、俺たちは連絡先を交換した。

 


それからというもの俺と彼女は連絡を取るようになった。

 

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今考えたら

 


もしあの時雨が降っていなかったら

 


もしあの時バス停にいかなかったら

 


もしもあの時バスが遅れていなかったら

 


僕と君は会えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


そう、これが俺とカナとの出会い。

 


この出会いが「NARUTO」の主題歌になるとは…

ほんと世の中、何が起きるか分からない。

 

 

 

 

 

 

作者:弁朕