私にして!

 

俺は物心ついた時からモテ期が止まらない。

 


何故こんなにモテるのか。

 


実を言うと、自覚がない。

 


聞くところによると、俺が何気なくしている

言動が女の子をときめかせているらしい。

 


周りはそれは罪だと言うが

本当にこれが罪なら俺の存在自体が

罪になってしまう。

 


ほんとに息苦しい社会だ。

 

 

 

 


今、俺を2人の女が取り合っている。

 


1人は学校のカーストトップにいる女。カナ。

カーストのトップをはれるだけの顔はある。

 

 

 

そして、もう1人は学校一のマドンナ。愛梨。

学校中の男どもがこの女に釘付けだ。

 

 

 

2人とも俺にとってはアリだ。

でも、好きという感情はどちらにも

あまりないってのが本音だ。

 

 

 

俺が選ぼうと思えば簡単な話なんだろうが

自分で選んでも今まで経験上、

すぐ飽きて捨てるだろうし、

そうなると周りへの体裁も悪い。

 

だから俺から選ばないようにしているが、

それ以上にこの2人の俺の取り合いが

最近は面白い。

 


取り合いといっても、

ドロドロの女の闘いとは少し違うと思う。

 


まず、2人とも俺を好きだということは

女友達や家族にも誰にも言ってないようだ。

 


お互い自分の権力を使って

無理矢理付き合おうとはせず

正々堂々、自分の力で俺を落としてきている。

 


これは今までの女と違って好感を持てる。

 


カナは、学校ではなかなか1人になることが

難しいからかいつも俺に放課後にアプローチしてくる。

 


それも俺が塾で遅く帰る日を狙って

俺の家の近くの公園でいつも待っているのだ。

 

 

 

しかも、綺麗にお粧しをして。

可愛いじゃねぇか。

 

 

 

 

 

 

愛梨はいつも靴箱に手紙を入れてくる。

でも、ラブレターとかではない。

 


いつも学校内のある場所と時間だけ書かれている。

 

 

 

16:00 理科準備室

16:20 社会科室

12:40 体育館倉庫

 

 

 

名前も書かれていないので

最初は何かと思ったけど、

指定された場所で現れたのが

学校一のマドンナだった時は驚いた。

 


いつも俺は指定された場所に行くが

そこで告白されること決してなかった。

大体たわいもない話をして終わる。

 


愛梨はとにかく俺の隣に座りたがる。

そして、距離をつめがちだ。

 


2人っきりだから、

その場所は広々使えるのに

いつも窮屈に感じる。

 


でも、それに対して悪い気はしてない。

 

 

 

 


そんな2人にアプローチされているが

1番面白いのがお互いが俺にアプローチしているってことを知っているということだ。

 

 

 

なぜそれを知っているのかは分からない。

でも、恋している女同士感じるものがあるのだろう。

 

 

 

2人とも俺との会話の中で、

気付かれないように相手の情報を探ってくる。

 


それに対して俺は気付いてないふりをして答える。

 


これは罪になるか(笑)

 


でも、2人とも情報を手に入れて自分の権力を使って相手を落としてやろうとは一切しない。

 


2人とも「権力でヒトは落とせない」っていうことをちゃんと理解している。

 


だから、相手の情報を探ってきてもそれに負けないように自分が努力する。

 


そういうことも好感を持てる。

 

 

 

まぁこんな感じで俺は誰も知らない

この究極の三角関係を楽しんでいる。

 

 

 

 

そして、季節は夏。

念願の夏休み。

 

 

 

夏休みに入り、2人のアプローチも

少しは落ち着くかと思いきや

逆にエスカレートした。

 

 

 

デートや宿題、海水浴…

 


2人は俺のスケジュールを埋めてくる。

 


俺は2人の約束が被らないように

スケジュールを立てるのに必死だった。

 

 

 

でも、1日だけどうしても調整ができない日があった。

それは夏休み終わり頃にある街の花火大会だ。

 

 

2人ともこの日は

どうしても一緒にいたいと言って聞かない。

 

だから、仕方なく

俺は各々に別の女から誘われているってことを打ち明けた。

 

 


すると、カナは

「一緒に花火見ないと泣いちゃう」

といい

 


愛梨は

「私は譲るつもりはないよ」

と言った。

 

 

 

ほんと困った奴らだ。

 

 

 

 


困った俺は花火が打ち上がる1時間を

30分ずつ分ける提案をした。

 

 

 

そして、花火大会が終わったら1人で帰るってことで2人は渋々承諾してくれた。

 

 

 

そして、花火大会の当日。

 

 

 

俺は最初に愛梨と会うことにした。

 


待ち合わせ場所に行くと

愛梨が綺麗な浴衣姿で待っていた。

 


「お待たせ!」

 


「ううん、全然待ってないよ!」

 


そういう愛梨の笑顔は本当に可愛かった。

 


そして、俺たちは誰にもバレないように気を遣いながら綿あめを食べたり、金魚すくいをしたりと夏祭りを楽しんだ。

 


側からみたらカップルに見えているんだろうな〜と思いながら、ほんとはカップルではない関係に少し興奮している自分がいた。

 

 

 

そして、花火が打ち上がり俺たちは

2人で打ち上がる花火を眺めた。

 


「きれーーーい……」

 


そう言いながら花火を眺める愛梨の顔は

花火なんかよりも綺麗だった。

 


(俺、やっぱり勿体ないことしてるよな?)

と思ったが、今自分が置かれている現状の満足感が上回ったためそれ以上考えないことにした。

 


そんなこんなで愛梨と少し話しながら花火を見ているとすぐに約束の30分が経った。

 

 

 

俺はカナとの約束があるので

愛梨に「じゃあ、行くね!」と伝えて

俺はその場を立ち去ろうと振り返った。

 

 

 

すると、後ろの裾をギュッと握られた。

 


俺は愛梨に「いい加減にしろよ」と

言おうと愛梨の方を振り返ると愛梨は少し怒った顔で

 

 

 

 


「今日は私にして!」

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もしこんなシチュエーションになったら

あなたのちんこいただきますよ。

 

 

 

作者:弁朕