タワーマンション

 

俺の部屋にある女が来た時の話。

 

その女はBarで出会った女で

俺はいつものようにそのまま自分が住むタワーマンションに連れ込もうとしていた。

 

「すごいところに住んでるね!」

 

「そうでもないよ」

 

「いやいや、タワマンじゃん!」

 

そう言って上を見上げる女。

 

俺は女に「こっちだよ」と言って、指紋認証でエントランスのドアを開けエレベーターに乗り、32階を押した。

 

「32階なの?めっちゃ高いじゃん!」

 

「まぁね」

 

「もしかして凄い人?」

 

「凄くはないよ、普通だよ」

 

そんな会話をしていたら32階に着いた。

俺は部屋のドアを開け、女を入れた。

 

「すごーーーーーい!!めっちゃ綺麗じゃん」

 

騒ぐ女。

いつもここに連れてくる女はあんな感じだ。

 

これからの流れとしてはソファに座らせてから、そういう行為にもっていく。

 

正直、部屋に連れ込んだ時点で悶々していた。

 

だから俺は女に

「こっちにおいでよ!」

と言ってソファへ誘った。

 

すると、女は窓の外を見ながら「ねぇ!」

と呼ぶと、俺の方を振り返りこう言った。

 

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「ここ"立ちバック映え"する部屋だね!」

 

 

もしこんなシチュエーションになったら

もう一本タワーマンションが建ちそうです。

 

 

 

 

作者:弁朕

 

もしも…

「最悪…雨だ…」

 

 

 

5月中旬。

昨日まで天気がいい日が続いてたのに

今日はあいにくの雨だ。

 

 

 

「仕方ない。バスで行くか。」

 

 

 

いつも大学まで30分かけてバイクで登校しているが、

雨の日は雨具を着るのがめんどくさいこともあり、

バスで登校していることにしている。

 

 

 

自宅からの最寄りのバス停は2つあり、

その2つとも同じくらいの距離にあっため

いつも気分で使い分けていた。

 

 

 

「今日は北の方から乗るか。」

 

 

 

そう決めて俺は傘をさして家を出た。

 

 

 

 


雨はどちらというと嫌いだ。

傘という手荷物も増えるし、ジメジメするし

いい事があるとは思えない。

 


6月生まれだからといって

うまいように雨好きとはならなかったみたいだ。

 

 

 

バス停近くのコンビニに寄り

いつものメロンパンとコーヒーを買い

バス停に向かった。

 

 

 

バス停に着く、そこにはバスを待つ人の

長蛇の列。

 

 

 

それを見て並ぶ気が失せてしまった俺は

バス停横にある公園に行き、

そこの屋根付き休憩所で

さっき買ったパンを食べることにした。

 

 

 

「あの列が消えて乗ろう…」

 


そう思いながら、俺はSNSを眺めながら

パンを食べた。

 

 

 

20分くらい経っただろうか…

 

 

 

ふっとバス停見てみると、あの長蛇の列が消えていた。

 


「そろそろ行くか…」

 


そう呟いて重い腰を上げた。

 

 

 

バス停に着き、時刻表を見ると

あと3分で来る予定になっており

「ラッキー」と思いながら俺はバスを待った。

 

 

 

待っている間、彼女からのLINEが来てたので

それを返していた。

 


そうしている内に、気づいたら予定の3分が経っていた。

 

 

 

「あれ?来ないな…」

 

 

 

どうやらこの雨でダイヤが乱れているみたいだ。

 


「まぁ雨の日なんてそんなもんだろ」

そう思いながら、俺はまた携帯を見た。

 

 

 

すると、1人の女性がバス停に来た。

ヘッドホンを首にかけた髪の長い女性。

 


その女性は少し焦った顔で時刻表を見ていた。

 


「16分のバス行ったかな…」

 


人に聞こえるか聞こえないかの声で呟いていた。俺は咄嗟に

 


「まだ来てないですよ!」

 


と言うと、その女性は少し驚いた表情をしたが、「そうですか!良かったぁ〜」と言いながら安堵の面持ちした。

 

 

 

「すみません。教えていただきありがとうございます!」

 


「いえ…」

 


「雨は嫌ですよね〜」

 


(会話続けるんだ…)

 


「そうですね。調子狂いますよね。」

 


「狂います。いつもバスなんて乗らへんのに」

 


「僕もですよ。」

 


「そうなんですか?同じですね!」

 


「そうですね〜…」

 


突然始まった会話。

ここで終わらせるのはバスが来るまで

何か気まずくなりそうな感じがしたから

俺は別の話題を探した。

 


「関西のご出身なんですか?」

 


「はい!やっぱり気づきます?」

 


「はい…笑笑」

 


「あかんなぁ〜、隠しきれへんな〜」

 


「関西弁は強いですもんね」

 


「そうなんですよ〜、直したいんやけどなぁ〜」

 


「えっ!なんでですか?」

 


「なんか可愛くないじゃないですか?」

 


「いや、可愛いですよ!」

 


「ほんまに?笑」

 


「ほんまに!笑」

 


そう言って俺と彼女は笑った。

 


「私こっちに来たばかりで、知り合いとかあんまおらへんからなんか話せて嬉しいです。」

 


「そうなんですか。きっとすぐ友達できます!」

 


「そんなことないですよ‼︎」

 


「いやいや、大丈夫ですって!」

 


「なら、友達になってくれます?笑」

 


「僕で良ければ!」

 


若干ノリでそう返すと、彼女は「じゃあ…」と言いながら携帯を取り出し

 


「LINE教えてください!」

 

 

 

俺は「えっ!マジか…」とは思ったが、

「いいですよ!」

 

と答え、俺たちは連絡先を交換した。

 


それからというもの俺と彼女は連絡を取るようになった。

 

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今考えたら

 


もしあの時雨が降っていなかったら

 


もしあの時バス停にいかなかったら

 


もしもあの時バスが遅れていなかったら

 


僕と君は会えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


そう、これが俺とカナとの出会い。

 


この出会いが「NARUTO」の主題歌になるとは…

ほんと世の中、何が起きるか分からない。

 

 

 

 

 

 

作者:弁朕

私にして!

 

俺は物心ついた時からモテ期が止まらない。

 


何故こんなにモテるのか。

 


実を言うと、自覚がない。

 


聞くところによると、俺が何気なくしている

言動が女の子をときめかせているらしい。

 


周りはそれは罪だと言うが

本当にこれが罪なら俺の存在自体が

罪になってしまう。

 


ほんとに息苦しい社会だ。

 

 

 

 


今、俺を2人の女が取り合っている。

 


1人は学校のカーストトップにいる女。カナ。

カーストのトップをはれるだけの顔はある。

 

 

 

そして、もう1人は学校一のマドンナ。愛梨。

学校中の男どもがこの女に釘付けだ。

 

 

 

2人とも俺にとってはアリだ。

でも、好きという感情はどちらにも

あまりないってのが本音だ。

 

 

 

俺が選ぼうと思えば簡単な話なんだろうが

自分で選んでも今まで経験上、

すぐ飽きて捨てるだろうし、

そうなると周りへの体裁も悪い。

 

だから俺から選ばないようにしているが、

それ以上にこの2人の俺の取り合いが

最近は面白い。

 


取り合いといっても、

ドロドロの女の闘いとは少し違うと思う。

 


まず、2人とも俺を好きだということは

女友達や家族にも誰にも言ってないようだ。

 


お互い自分の権力を使って

無理矢理付き合おうとはせず

正々堂々、自分の力で俺を落としてきている。

 


これは今までの女と違って好感を持てる。

 


カナは、学校ではなかなか1人になることが

難しいからかいつも俺に放課後にアプローチしてくる。

 


それも俺が塾で遅く帰る日を狙って

俺の家の近くの公園でいつも待っているのだ。

 

 

 

しかも、綺麗にお粧しをして。

可愛いじゃねぇか。

 

 

 

 

 

 

愛梨はいつも靴箱に手紙を入れてくる。

でも、ラブレターとかではない。

 


いつも学校内のある場所と時間だけ書かれている。

 

 

 

16:00 理科準備室

16:20 社会科室

12:40 体育館倉庫

 

 

 

名前も書かれていないので

最初は何かと思ったけど、

指定された場所で現れたのが

学校一のマドンナだった時は驚いた。

 


いつも俺は指定された場所に行くが

そこで告白されること決してなかった。

大体たわいもない話をして終わる。

 


愛梨はとにかく俺の隣に座りたがる。

そして、距離をつめがちだ。

 


2人っきりだから、

その場所は広々使えるのに

いつも窮屈に感じる。

 


でも、それに対して悪い気はしてない。

 

 

 

 


そんな2人にアプローチされているが

1番面白いのがお互いが俺にアプローチしているってことを知っているということだ。

 

 

 

なぜそれを知っているのかは分からない。

でも、恋している女同士感じるものがあるのだろう。

 

 

 

2人とも俺との会話の中で、

気付かれないように相手の情報を探ってくる。

 


それに対して俺は気付いてないふりをして答える。

 


これは罪になるか(笑)

 


でも、2人とも情報を手に入れて自分の権力を使って相手を落としてやろうとは一切しない。

 


2人とも「権力でヒトは落とせない」っていうことをちゃんと理解している。

 


だから、相手の情報を探ってきてもそれに負けないように自分が努力する。

 


そういうことも好感を持てる。

 

 

 

まぁこんな感じで俺は誰も知らない

この究極の三角関係を楽しんでいる。

 

 

 

 

そして、季節は夏。

念願の夏休み。

 

 

 

夏休みに入り、2人のアプローチも

少しは落ち着くかと思いきや

逆にエスカレートした。

 

 

 

デートや宿題、海水浴…

 


2人は俺のスケジュールを埋めてくる。

 


俺は2人の約束が被らないように

スケジュールを立てるのに必死だった。

 

 

 

でも、1日だけどうしても調整ができない日があった。

それは夏休み終わり頃にある街の花火大会だ。

 

 

2人ともこの日は

どうしても一緒にいたいと言って聞かない。

 

だから、仕方なく

俺は各々に別の女から誘われているってことを打ち明けた。

 

 


すると、カナは

「一緒に花火見ないと泣いちゃう」

といい

 


愛梨は

「私は譲るつもりはないよ」

と言った。

 

 

 

ほんと困った奴らだ。

 

 

 

 


困った俺は花火が打ち上がる1時間を

30分ずつ分ける提案をした。

 

 

 

そして、花火大会が終わったら1人で帰るってことで2人は渋々承諾してくれた。

 

 

 

そして、花火大会の当日。

 

 

 

俺は最初に愛梨と会うことにした。

 


待ち合わせ場所に行くと

愛梨が綺麗な浴衣姿で待っていた。

 


「お待たせ!」

 


「ううん、全然待ってないよ!」

 


そういう愛梨の笑顔は本当に可愛かった。

 


そして、俺たちは誰にもバレないように気を遣いながら綿あめを食べたり、金魚すくいをしたりと夏祭りを楽しんだ。

 


側からみたらカップルに見えているんだろうな〜と思いながら、ほんとはカップルではない関係に少し興奮している自分がいた。

 

 

 

そして、花火が打ち上がり俺たちは

2人で打ち上がる花火を眺めた。

 


「きれーーーい……」

 


そう言いながら花火を眺める愛梨の顔は

花火なんかよりも綺麗だった。

 


(俺、やっぱり勿体ないことしてるよな?)

と思ったが、今自分が置かれている現状の満足感が上回ったためそれ以上考えないことにした。

 


そんなこんなで愛梨と少し話しながら花火を見ているとすぐに約束の30分が経った。

 

 

 

俺はカナとの約束があるので

愛梨に「じゃあ、行くね!」と伝えて

俺はその場を立ち去ろうと振り返った。

 

 

 

すると、後ろの裾をギュッと握られた。

 


俺は愛梨に「いい加減にしろよ」と

言おうと愛梨の方を振り返ると愛梨は少し怒った顔で

 

 

 

 


「今日は私にして!」

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もしこんなシチュエーションになったら

あなたのちんこいただきますよ。

 

 

 

作者:弁朕

 

モルディブブリッジ

 

インドから南に位置する島、モルディブ島。

 

インド洋に浮かぶ島々は、

そのあまりの美しさからこの海域を

航海していた人々が

真珠の首飾り」と名付けたほど

目の前にブルーな海と真っ白砂浜が広がっている

まさにリゾート地。

 

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このリゾート地にハネムーンで訪れる人が多い中、

ある男がこの地に降り立った。

 

「ここがモルディブかぁ〜」

 

この男の名は「陳 峰」。

世界各国を股にかけてきた冒険家だ。

 

この男がモルディブに降り立った目的はただ一つ。

 

【伝説のモルディブブリッジを見つけること】

 

橋が存在しないモルディブに、

誰もが息を飲むような美しい橋があるという。

 

男はこのモルディブブリッジを見つけるため

早速、島の住人に聞き取り調査をした。

 

しかし、島の住人に聞いても全く情報が集まらなかった。

 

 

だが、この状況に男は燃えていた。

 

「すぐに見つかっては冒険家の名が廃る」

 

男はモルディブの様々な場所を自分の足で調べ回った。

 

僻地にあるジャングルの中

海底の中

無人島の中

 

ありあらゆるところを駆け回った。

 

だが、手がかり一つ掴めない。

 

そして、そんな状態が3ヶ月続いた。

 

 

 

 

 

さすがの男もバーでウィスキーを飲みながら

現状に頭を抱えていた。

 

「ここまで情報が得られないとは…」

 

冒険家を始めて20年。

こんなに情報が集まらないのは初めてだった。

 

「はぁ〜〜〜」

 

とため息吐いていると

 

モルディブにため息は似合いませんよ!」

 

と後ろから声を掛けられた。

 

男は酔っ払いながら後ろを振り向くとそこにはスタイルの良い女性が立っていた。

 

「何をそんなに落ち込んでるですか?」

 

「あぁ、あやかさんか…ちょっと仕事でね…」

 

「そんなに気負い過ぎちゃダメですよ!もっと楽しくいきましょう!」

 

ヨガインスタラクターのあやかさん。

3年前からヨガインストラクター講師として

この島に降り立った。

 

あやかさんとは聞き取り調査の時に仲良くなって

よくこのバーで会うようになった。

 

「こんなに見つからないのは初めてだ…」

 

「そんな時もありますよ!」

 

男はそうかなぁ〜と呟きながら、ウィスキーを飲んだ。

 

「そんな辛気臭い顔してたら、見つかるものも見つかりませんよ!今日は私がとことん付き合いますから、明日からまた頑張りましょう!」

 

そう言って2人は乾杯をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピッピッピッピッピッピッ…」

部屋中に鳴り響くアラーム音。

男は携帯のアラームを消し、天井を見上げた。

 

「どこだ?ここは?」

 

どうやら昨日飲み過ぎたらしい。

 

ベットから起き上がり、部屋見渡した。

どうやら寝室みたいだ。

 

部屋の壁には写真が飾られてあり、

そこにあやかさんとヨガの生徒が

一緒に写っていた。

 

「ここはあやかさんの家か…」

 

正直、あの乾杯以降、あまり記憶がない。

 

「やってしまったなぁ〜…」

 

そう呟いて、男は寝室を出た。

 

寝室を出るとそこはリビングで

いつも食事をしてるのであろうテーブルに

置き手紙が置いてあった。

 

 

「おはようございます!

昨日はよく眠れましたか?

よかったらシャワー使ってください。

私はバルコニーでヨガをしていますので

気になさらずゆっくりしてください。」

 

 

「ヨガ?」

 

そう呟いて、バルコニーに続くであろう

窓を見た。

 

カーテンが閉められており外が見えない。

 

男はヨガに少し興味があったので

そーっとカーテンを開けて覗いてみた。

 

すると、そこで男が目にしたものは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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モルディブブリッジ……」

 

 

 

 

 

もしこんなシチュエーションになったら

あの岡本を震え上がらせます。

 

 

 

作者:弁朕

風見鶏

「健二くん、起きて〜!」

 

朝8時、俺は起こされた。

 

「もう朝かよ…もう少し寝かせて……」

 

そう言って俺は布団にくるまり込んだ。

 

しかし、「もう!学校遅刻するよ!」と言われて、俺は布団をはがされた。

 

「やめろよ〜…寒い…」

「ほら、寒いならこれ着て!」

 

そう言って上着を差し出され、彼女は俺を見ていた。

 

「わかったよ…起きればいいんだろ!」

 

そう言って、俺は眠たい目を擦りながらベットから起き上がった。

 

もう10月に入り、外は少しずつ寒くなってきており、学校の制服はシャツから学ランに変わっていた。

 

「もう!遅刻するって!」

「わかってるって!」

 

そう言って俺は自分の部屋を出た。

 

「いつもごめんね、まゆちゃん」

「いえ、これ日課なんで!笑」

 

このやりとりは母とあゆみの間では毎日のように行われている。

 

俺からすればそのやりとりが朝の儀式のように思えてくる。

 

「ちょーありがた迷惑…」

「うるさい!」

 

まゆは小学校からの幼じみで、学校がある日は毎朝、俺の部屋に来ては俺を無理矢理起こしてくる。

まぁ、そのお陰で遅刻せずに済むんだが…

 

「今日、朝飯いらねーわ…」

「またぁ〜?あんた、それで勉強できんの?」

「余裕…じゃあ、行ってきます」

「えっ!ちょっと待ってよ〜!」

 

そう言って俺たち2人は家を出た。

外は晴れており、登校するにはうってつけの天気であった。

 

「ちゃんとご飯は食べようよ!」

「お前もお母さんみたいなこと言うなよ!」

「だって…ただでさえ健二くん勉強苦手なんだから…」

「うるせぇ!」

 

ホントに母親を2人持っているようだ。

まゆとは付き合ってはない。

別にこいつと関係を持とうとは思わなかった。

 

けど、こういう風にいつも2人で歩いていると付き合っている間違えられることが多かった。

 


「じゃあね!」

「あぁ…」

そう言って俺たち2人はそれぞれのクラスに入っていった。

 

俺は毎日、自分のクラスに入ることでやっと自分だけの時間が持てるような気がしていた。

 

教室に入ると真面目に勉強してる人もいれば、楽しく友達と喋る人、読書をしている人といつもと変わらない風景があった。

 

俺も窓側の自分の席に座り、いつも通りホームルームまでぼぉーと外でも見て、それから何となく授業をこなす、今日もそんないつもと変わらない学校…そうなると思っていた。

 

「桜井くん、おはよう!」

 

隣の席の菊池さんが挨拶をしてきた。

 

俺も「おはよう」と返すと彼女はニコッと笑って席に座った。

 

前から思っていたが、俺は菊池さんの笑顔にいいなと感じているようである。

 

まぁ、それだけで菊池さんにそれ以上の好意を持つことはなかった。

 

会話と言っても、この朝の挨拶くらいで他はお互い自分の友達と話すため、ほとんど会話することはなかった。

 

だから、菊池さんも俺に好意を抱くことはないと思っていた。

 

しかし、人が誰かを好きなるきっかけなんて、そんな大それたことが必要という訳ではない。

 

むしろ、ちょっとしたこと、毎日何気なくやっていること、そんなことぐらいで人は簡単に恋に落ちる。

 

例えば、

何気なくジャンプしてみたり、

何かを落としたから咄嗟に拾ってみたり、

消しゴムを貸してあげたりと、

そのくらいで人が恋に落ちるのには十分なのである。

 

菊池さんもそうであった。

 

この毎朝、何気なく交わす挨拶で俺に恋に落ちたようである。

 

それを知ったのは昼休みであった。

 

突然、菊池さんから呼ばれて俺は中庭に行き、そこで告白されたのである。

 

告白されたことは嬉しかったが、まだ菊池さんのことをあまり知らない俺は断ろうとしたが、それを知っていたかのように菊池さんはまずはデートからしてみませんか?と誘ってきた。

 

俺はそれに承諾して、今週末デートすることになった。

 


「おい!菊池が桜井に告ったらしいぜ!」

 

中庭という目立つところで告白されたせいか噂は瞬く間にクラスを超え、学校中に広まった。

 

クラスの友達も隣に菊池さんがいるのにも関わらず俺のところにきては冷やかしてきた。

 

俺は告白された側だからいいが、菊池さんの事を思うとなんだか可哀想に思えた。

もちろん、まゆもこの噂を耳にしていた。

 


帰り道。俺はいつもと同じようにまゆと下校していた。

 

「今日も学校、キツかったね!」

 

そう言う彼女はなんだかぎこちなかった。

 

何かをを隠しているような話し方をしていた。

長年こいつを見てきたから分かる。

おそらく俺が告白されたことに対してだろう。

そう思った時、まゆが俺のことを好意を抱いていることに気づいた。

 

「なぁ!」

「うん?!」

 

そう言って俺の方を向く、彼女の顔は強張っていた。

 

「知ってんだろ?今日のこと。」

「うん…知ってるよ!」

 

とまゆは誰でも分かるような作り笑いをして言った。

 

そして、続けて

「良かったじゃん!健二くん、いつも私しか女がいないと思ってたから少し安心した。」

 

「強がんなよ!」俺はそう思いながも、彼女には「そうか…」と返した。

 

それから俺たちは会話することなく、家に帰っていった。

 

 

 

日曜日。俺は菊池さんとのデートのために待ち合わせ場所へ歩いていた。

 

待ち合わせ場所に着くともうすでに菊池さんがいて、いつものように挨拶を交わした。

 

その時も菊池さんの笑顔はいいなと思った。

 

それから、俺と菊池さんは映画を観たり、ショッピングをしたりとデートらしいデートをやった。

 

そして、俺と菊池さんは夕食を食べることにした。

 

「えっ!?菊池さんって陸上部だったの?」

 

偶然にも中学の頃、同じ陸上部という話題で盛り上がり、時間はあっという間にすぎていた。

 

この頃には、俺は菊池さんといることが楽しいと思うようになっていた。

 

すると、菊池さんは急に真面目な顔になり俺にこう言った。

 

「いきなり告白してごめんね…あんな目立つところで告白したから桜井くんに迷惑かけたね…」

 

「いや、俺は全然大丈夫だよ!逆に菊池さんは大丈夫だった?」

 

「私は大丈夫だよ!桜井くんには迷惑だったかもしれないけど、私はあそこで桜井くんに告白したことは後悔してないよ!」

 

そう言う菊池さんの顔は優しく、そして幸せそうな笑みで俺はそれに少しときめいていた。

 

この人と一緒にいてもいいかなと思うようになっていた。

 

なんか俺にないものを持っていて、どことなく菊池さんに惹かれている俺がいた。

 

けど、それと同時にまゆの顔が浮かんだ。

 

それから俺たちはたわいもない話をしながら食事を済ませて、俺は菊池さんを送って帰った。

 


「明日、まゆに話そう…」そう思いながら俺は自分の家へと帰っていた。

 

そして、携帯を取り出しまゆに「明日会えるか?」と連絡した。

 

すると、数分後に「わかった」という返信が来た。

 

明日は祝日。

 

まゆに菊池さんと付き合おうと考えているってことを話すと思うと少し胸が痛んで、憂鬱に感じている俺がいた。

 


そして、翌日。

 

俺とまゆは近くの公園で会う約束していた。

 

俺はまゆより早く行こうと思い、約束の時間より10分早く行ったが、まゆはすでに公園にいた。公園のベンチに座るまゆを見て、俺は胸が苦しくなった。

 

「おはよう!」

「おはよう…」

 

そう言って俺はまゆが座っているベンチに座った。

 

まゆの目は明らかに腫れていた。

 

ベンチに座るとまゆが「昨日のデートどうだった?」と訊いてきた。

 

俺はいきなりそんな質問が来るとは思わず「えっ?」と驚くと、彼女は「その話でしょ?」と言って俺の方を向いて笑った。

 

俺は決まり悪そうに「うん…」と答えた。そして、2人の間に沈黙が起きた。俺は勇気を出してまゆに

 

「俺、菊池さんと付き合おうと思ってるけど…どうかな?」

 

と自分の想いを伝えた。

 

すると、彼女は俯きながら少し笑うといきなり立ち上がった。

 

そして、数歩前を歩いていピョンと飛びながら振り返りこう言った。

 

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「ダメーーーーーーー!」

 

 

 

 


もしこんなシチュエーションになったら、俺のチンコ切ってくれ!

オレンジジュース

体育館の裏、そこが俺の唯一の居場所な気がする。すべてを忘れるこの空間が俺を俺らしくしてくれる気がした。

 


だから、俺は昼休みになるとそこへ行き、昼食を食べる。

 


昼食はメロンパンとオレンジジュース。

 


なぜ、メロンパンとオレンジジュースなのかは俺にもわからない。

ただ、なんとなく毎日これを買ってしまう。

 


俺「甘酸っぱい…」

 


オレンジジュースの甘酸っぱさは恋の味と言うがそう思った事は一度もない。

 


俺も恋はしたことがある。

 


だが、甘酸っぱいと思ったことは一度もない。だから、「恋は甘酸っぱい」ということはあまり信じていない。

 


外は桜が散り始めていた。昼休みに入ったので、俺はいつものように体育館裏に行くとそこに男と女がいた。

 


「ごめん、俺、好きな人ができた…お前とはもう付き合えない。だから、さようなら」

 


どうやら別れ話のようだ。こんなことを俺の唯一の居場所でしないでほしい。そう思いながら2人を見ていると

 


「そっか………わかった。今までありがとう」

 


女はそう言って、男はまた「ごめん」とだけ言い、その場を立ち去った。

 


女は立ち去る男の後ろ姿を見つめていた。

 


俺はその女の姿をただ見ていた。

すると、女が俺に気がついた。

 


俺は咄嗟に

俺「ごめん!聞くつもりはなかったんだ」

 


俺はそう言うと女は笑顔を作って

 


女「こっちの方がごめんね。嫌なもの見せたね」

 


と彼女が言ったので俺が「そんな事ないよ」と言おうとした瞬間、彼女の瞳から一粒の涙が見えた。

 


見えたと思ったら、その粒は多くなり、まるで雨のように彼女の瞳から溢れ出した。

 


彼女「ごめんね…」

 


俺は突然の事で驚いてしまい、涙を流す彼女をただ見ているという時間が続いた。

 


すると、彼女がポケットに手を入れてハンカチを探し始めた。

 


俺は急いで自分のポケットに入っていたシワくちゃのハンカチを渡した。

 


彼女は「ありがとう」と言って涙を拭いた。

 


「こんなことならちゃんと洗濯して綺麗にしとけば良かった」と思いながら泣き続ける彼女をただ見ていた。

 


いや、見ることしかできない自分がいた。

 


でもこれではいけないと思い、泣き続ける彼女を慰めるために買ってきたオレンジジュースを手に取り

 


俺「オレンジジュース飲む?」

と聞いた。

 


しかし、彼女は横に首を振った。

 


俺は「そっか」と言い、それならと思いオレンジジュースにストローを刺し自分で飲むことにした。

 


オレンジジュースはもう温くなっていた。

 


温くなったオレンジジュースはやはり美味しくない。

 


そう思っていると、彼女が「オレンジジュース好きなの?」と訊いてきた。

 


俺は「普通かな」と答えると、

彼女は「私は好き」と返した。

 


俺「えっ!!なら、どうしてさっきオレンジジュースいらないって言ったの?」

 


彼女「今飲んだら切なくなりそうだから」

 


俺は軽率なことを言ってしまったことを反省し、「ごめん」と彼女に言った。

 


それに対して彼女は「全然!気持ちは伝わったから」と答えて逆に俺を励ましてくれた。

 


俺は何やってんだと思っていると彼女から

 


彼女「オレンジジュースって恋の味だよね」

 


と言ってきた。でも、俺は正直に

俺「俺はあまりわからないな」

と答えた。

 


彼女「ほんとに?君って恋したことないの?」

俺「あるよ!でも、甘酸っぱいと感じたことはないよ」

彼女「なら、本当の恋をしたことないんだよ」

「本当の恋…」その言葉が俺の胸に刺さった。

 


「俺って本当の恋をしたことあるのか?」と考えていると、授業10分前を知らせるチャイムが鳴った。彼女は立ち上がり、俺の顔を見て

彼女「君、名前なに?」

と聞いてきたので俺は慌てて

俺「田中!2年8組」

こういう事に慣れていない俺は「なに訊かれていないクラスまで言っているんだ、我ながらマジきもい」とちょっと死にたい気持ちになっていると

彼女「隣のクラスじゃん!私、木下!7組だよ!」

と彼女はそんなことで何も引かずに返してくれた。

 


俺は少し安堵して「そうなんだ」と答えた。

 


が、それから話を続けられそうにない自分に気づき、この場から早く立ち去りたいと思いそのまま彼女に「じゃまたね」とだけ伝えて立ち去ろうとした。すると、彼女はそれを引き止めるように

 


彼女「今日はありがとう!なんか田中くんと話せてちょっと気が楽になった!」

 


帰る俺に向かって言ってきた。俺は

俺「別に俺は何もしてないけど、お役に立てたならよかったよ」

と言って再度振り抜いて立ち去ろうとすると

彼女「ねぇ!またここに来たら話せるかな?」

と彼女が訊いてきた。俺は自然と

俺「うん!大体いるよ!」

と答えてしまった。それを聞いた彼女は

彼女「そっか」

と笑顔で言い、先に教室へ帰って行った。帰っていく彼女を見ながら、俺はなに自分の居場所を軽々しく言っているんだと後悔した。

 


それからというもの、彼女は昼休みになるとちょこちょこ体育館裏に顔を出すようになった。俺は正直、一人で居られるこの場所での時間が好きだったから彼女が来る事に嫌な気持ちはあった。けれども、彼女と話することは嫌いではなかったから複雑な気持ちであった。

 


そんな日が続いたある日の昼休み…彼女は突然、俺にこう言った。

 


「私、好きなの人ができた!」

 


彼女の幸せそうな顔から見てこれは本当だろうと思った。俺は「良かったね」言って、メロンパンを一口嚙り、「で、誰なの?」と訊くと彼女は5組にいる木村と答えた。どうやら、同じ委員会で話をする内に惹かれていったらしい。

それからというもの、昼休みになれば俺ところに来て木村の話をしてきた。木村の一挙一動の行動に対して想いを弾ませたり沈ませたりしている彼女を見て、「なにやってんだよ」と少し呆れながら話を聞いていた。

 


そんなある日、帰宅しようと教室を出て玄関に向かう途中、委員会に行く彼女と木村の姿を見た。木村の隣にいる彼女はとても幸せそうだった。そんな幸せそうな彼女の顔は今まで見た事ない顔だった。しかし、そんな彼女の顔を俺はなぜか見る事ができなかった。その時をきっかけに俺は彼女の話を正面から受けとることができずにいた。

そして、いつもと同じように彼女は体育館裏に来て、木村の話をし始めた。幸せそうに木村の話をする彼女の顔を見ているとあの下校の時に見た彼女の顔をふと思い出した。その瞬間

 


「そんなに好きなら俺なんかのところに来ないで、木村に告白してこいよ!」

 


と声を上げてしまった。なぜ、俺はそんなことを言ってしまったのか自分でもわからない。俺はすぐに我に返り「ごめん」と言うと、彼女は俺を見て

彼女「そうだよね!ありがとう!私、告白するね!」

と言ってそのまま立ち去っていった。その時、彼女は俺に背中を押して欲しかったのだと気付いた。

俺が背中を押して、数日後、2人は付き合い始めたという噂を耳にした。俺はこれでいつものように一人で体育館裏でご飯が食べられる生活に戻れると思った。だけど、心が晴れない。本当なら嬉しいはずなのに…………

 


その日の昼休み、いつものように売店に行きメロンパンとオレンジジュースを買って体育館裏に行こうとした。でも、その日は体育館裏に行く前にどうしてもオレンジジュースが飲みたくなった。体育館裏に行く通路を歩きながらオレンジジュースにストローを挿し、オレンジジュースを飲んだ。体育館裏に着くとそこには彼女いた。そして、

 

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「木村くんと付き合うことができたよ」

そういった彼女の顔はまた今まで見た事のない顔だった。

そして、その時に飲んだオレンジジュースはいつもよりとても甘酸っぱく感じたんだ。

そんな高校2年生の夏だった  ーーーー

 


セミ「キーモティンティンティンティン…」

 

 

 

 

作者:弁朕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物的証拠

いつも思うことがある。

なぜ、男と女が一緒にいる必要があるのか。

そう思いながら、俺は月9を眺めていた。

 

「腹減ったなぁ〜、コンビニでも行くか!」

 

そう言って、俺はテレビを消した。

「ガチャ!」

(鍵は閉めたっと…)

 

俺は別に童貞でもないし、店で済ませてるわけでもない。

普通の人生を歩んできたつもりだ。

彼女も数人いたし、そのそれぞれと経験はしてきた。

だから、あっち系でもないし、童貞の負け惜しみをしてるわけでもない。

 

 

「いらっしゃいませ〜」

 

 

いつも行くコンビニ。

俺は弁当コーナーへ行った。

 

「特にないなぁ〜」そう思って、次にインスタント食品のコーナーに行くとある女性が先にいた。

 

「えぇ〜!UFOないじゃん!」

 

どうやら酔っ払っているようだ。

 

あまり絡みたくない。

 

だけど、俺は彼女が探しているUFOを見つけてしまった。

 

言うかどうか迷ったがいつまでもここで駄々をこねられていそうでそれではお店に迷惑を掛けそうだったから「あの〜、UFOありますよ!」と言って彼女にUFO差し出した。

 

すると、彼女は

「おぉ!あんじゃん!あんたありがとうね!」

「いえ…」

そう言って彼女はレジへ向かっていった。

 

ギャルと清楚の合間の女子という表現がぴったりな女性だった。

 

世間一般からすれば可愛らしい、綺麗な女性だったと思う。

でも、あんな姿を見せられては幻滅だ…

そう思いながらレジに行く彼女をよそ目に、インスタントコーナーを見た。

 

いろんなインスタント食品があるが、結局、俺もUFOを食べたくなりUFOを選んで、その他気になるもの手に取りレジに持っていった。

 

「ありがとうございました!」

 

店員が入れてくれた買い物袋を持って、出ようとするとさっきの女がUFOにお湯を入れるためか電気ポット前に立っていた。

 

「なにこれ〜!お湯出ないんだけど!!スミマセ〜ン!」

 

俺はすぐさま彼女に駆け寄り、電気ポットのロックボタンを解除した。

 

「これでお湯出ますから!」

「ホントに?ありがとうございま〜す!」

 

アホな女だ。

こういう女は嫌いだ。

俺は怪訝そうに見る店員さんに軽くお辞儀をして店を出ようとすると、彼女が突然、

「熱いーーーーぃ!」

と叫び出した。

 

詳しい状況は見ていなかったが、たぶんお湯を自分の指を掛けたのだろう。

床にUFOの麺が散在していて地獄絵図だった。

「もぉ〜最悪ぅ〜!」

と言って彼女は濡れた服と汚れた床を見ていた。

放って帰ろうかと思ったが、彼女がその哀れな状態で俺の方を見てきたので、なんか逃げようにも逃げられず介抱することにした。

 

店内を掃除するのを手伝って、俺は彼女を連れて店を出た。店から出ると彼女が俺に向かって「あんた誰?」と訊いてきた。

 

俺は「それはこっちのセリフです!」と答えると「そうだよね〜」と言って笑い始めた。俺が「家はどこですか?」と訊くといきなり何かを思い出したかように「あっ!」と大声を出した。

 

何かと思えば「UFO持って来るの忘れた!」と言い始めた。

 

さっき、自分が溢したのも忘れてやがる、どんだけ酔ってんだよと思いながら「UFOはここにあります!」と言って自分が買ったUFOを見せた。

 

それに安心したのか「良かったぁ〜」と言ってその場にしゃがみ込んだ。

 

おいおいマジか!と思いながらも彼女に「どうしたんですか?」と尋ねると彼女は「もう歩けない!」と駄々をこねはじめた。

 

俺は仕方なく彼女をおんぶすることにした。

 

 

 

「家はどこなんですか?」

「………」

俺は彼女を背負いながら訊いたが返事がない。見ると彼女は気持ちよさそうに寝ていた。

 

「勘弁してくれよ〜」

 

そう呟いて、仕方なく自分ん家に連れて帰ることにした。

 

「これって朝起きたらめんどくさいことになるだろうな…」

そう思いながら、俺は彼女をベットに寝かせた。

俺は買ってきたUFOにお湯を入れた。

 

22時を過ぎていた。

 

俺はUFOを食べながら少しテレビを見た。

そして、食べ終わるとテレビを消してソファで寝ることにした。

 

 

 

「ピッピッピッピ ピッピッピッピ」

 

目覚まし音が鳴った。

俺は目を覚まして会社に行く支度をし始めた。ある程度支度が出来たところで、そぉーと寝室を見た。

 

まだ彼女はぐっすりと寝ていた。

 

起きた時、騒がれて物を壊されても怖いから、俺は置き手紙を書いておいとくことにした。

 

当たり障りのない手紙を書き、テーブルの上に鍵と一緒に置いた。

 

再度、手紙に1003のポストの中に入れておくように書いてあることを確認して俺は会社に向かった。

 

 

 

「お疲れ様です〜!」

会社も終わり、帰宅することにした。

 

そう言えば、昨日の彼女どうなったかな?

ちゃんとポストに鍵入れて帰ったかな?

 

そう思いながらマンションに着いた。

 

俺は1003のポストを開けた。

鍵があった。

 

「良かったぁ〜」そう思いながら、俺はエレベーターで10階まで上がった。

 

今日は昨日みたいに夜、コンビニに買いに行かないように予め夜食を買っておいていた。

 

家の前まで来て、俺はポストに入っていた鍵でドアを開けた。

 

「ただいま〜」

 

と言ってドアを開けると部屋に明かりがついていた。

 

あれ?電気つけっぱなしで出たかなと思っていると中から「おかえり」という声がした。

 

「えっ!?」俺はすぐさま部屋に向かった。すると昨日の女がリビングでテレビを見ていた。

 

「何してるんですか?」

「何してるんですかってテレビ見てんの!」

「そうじゃなくて、俺が言いたいのはなんでまだあなたがここにいるかを訊いているんです!」

「ねぇ、タメ語でいいよ!そっちの方が明らかに年上でしょ!」

「そういうことではなくてですね…」

「あぁ!UFO!」

 

そう言って彼女は俺が持っていた買い物袋を取った。

 

実は昨日、UFOを久しぶりに食べて意外と美味しかったから今日も買ってしまっていたのである。

 

「そりゃ昨日食べてないからな…」

 

俺は小声で言うと、彼女は興味もないくせに「なんて?」と言葉を発して俺が買ってきた物を漁ってた。

 

「ねぇ!お湯どうやって入れてるの?」

彼女は人の家だと御構い無しに台所を歩き回っていた。荒らされるのも嫌だった俺は電気ケトルに水を入れてスイッチを入れた。

 

「おぉ!やるじゃん!」

 

そう言って彼女はUFOの火薬を容器に入れ始めた。

 

「いつになったら帰るですか?」

「あんたが私をここに連れてきたんだから、私がいつ帰ろうが勝手でしょ!」

 

なんだよ、その理論は!と思いながらも俺は彼女に質問を続けた。

 

「あなた、歳はいくつですか?」

「レディーに年齢聞くなんて失礼だよ!女の人に対する礼儀知らないの?そう言えば、あんたの家、女の匂いがしないよね!まさか、彼女いないの?」

「いないよ!」

「なら、童貞?」

「なんでそうなるだよ!」

「童貞なんだ!」

「童貞じゃねーよ!」

 

俺がそう言うと彼女はふーんとした顔でこっちを見た。

 

「ポッ」

 

電気ケトルがお湯を沸かした音がした。

音がした同時に彼女はケトルのところへ行き、UFOにお湯を入れ始めた。

 

「朝から何も食べてなかったんだよね〜」

そう言ってUFOの蓋を閉めた。

 

「そう言えば家にいるならなんでポストに鍵入れてんだよ!」

 

もう敬語を使わなくなっていた。

 

「驚かせようと思って!」

 

いたずらっぽく笑った。

俺はため息をつくと続けて彼女に話した。

 

「てか、知らない男とその部屋で怖くねーかよ?」

 

「まぁ顔見てヤバそうな人だったら、すぐ帰ろうと思ったけどあんたからは危険な匂いがしないからいいかなぁ〜って!」

 

そう言って湯切りが終わったUFOにソースを入れて食べ始めた。

 

「逆にさ、あんたも女が部屋にいるのに襲わないわけ?」

 

「別に興味ないからな!」

 

「えっ!あんたそっち系?」

 

「違う!別に女が必要とあまり感じないだけだ!」

 

「へぇ〜…」

 

そう言って彼女はUFOを啜った。

 

俺が買ってきたUFOは見る見るうちなくなっていった。

余程、お腹が空いていたんだろう。

 

「じゃあさ、私ってあんたにとって魅力的に見える?」

 

「はぁ?世間的には魅力的なんじゃねーの!」

 

「世間的とかじゃなくて、あんた自身だよ!」

 

「俺自身?別に魅力的じゃねーけど!」

 

「そうなんだ…」

 

そう言って何か企んだような笑いをした。そして、彼女は立ち上がり

 

「今日はもう遅いから、今日も泊まっていくね!」

 

「おい!」

 

「ねぇ!お風呂貸して!昨日から入ってなくて体ベトベトなの。ねぇ、いいでしょ?」

 

そう言って俺の許可をもらうことなく風呂場へ歩いて行った。

 

「なんて傲慢な女だ」俺は呆れ返っていた。

 

でも、こんな風に女と喋るのはなんか久しぶりな感じがした。

 

 

彼女がシャワーを浴びている音がする。

 

普通ならテンション上がるところだが、俺にはどうでもよかった。

 

それ以上に早く帰ってくれとしか思わなかった。数分して彼女が風呂から上がってきた。

 

「お前さ、明日こそは絶対かえ……」

 

俺は風呂から上がってきた彼女を見て、唖然とした。

 

なんと彼女はブラとパンツしか履いてなかったのだ。

 

「いい風呂だったよ!」

 

そう言って持っていた私服を椅子にかけ、自分もその隣の椅子に座った。

 

そして、テーブルの上にある雑誌を読み始めた。

 

「で?なんか言いかけたよね?」

 

と言って俺を見てきた。

 

俺は「いや、何にも…」と言って彼女から目を逸らした。

 

すると彼女は「やっぱりこれでは寒いか」と言い出して持っていた私服の上の1枚だけ着始めた。

 

その一枚がスケスケの上着で、その上着ではブラは隠れず、逆に透けてみえるからエロさが増していた。

 

俺は無意識に彼女の身体を見てしまっていた。それに気づいたのか彼女は俺の方を向いた。

 

「何見てんの?」

 

と訊いてきたが、俺は彼女がこっちを向くと同時に別の方向を向いたため「別に見てねーし」と誤魔化した。

 

だが、俺の下は嘘をつくことは出来なかった。

 

彼女はそっぽ向く俺に対して

少し笑って「ねぇ!」と俺を呼んだ。

 

俺はゆっくりと彼女を見ると彼女は俺の下を指差しながらこう言った。

 

 

 

 


「物的証拠❤️」

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もしこんなシチュエーションになったら、頼むから俺のチンコを古墳に埋めてこれ以上使えないように埋葬してくれ!!

 

 

 

 

作者:弁朕